月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2024.04.03

金久保翔(金沢武士団キャプテン)インタビュー——「今は本当に頑張るしかない」

身長191cmのレフティー・シューター金久保翔。今シーズンは金沢武士団でキャプテンを務めている

41日・2日のB3リーグ第25節、金沢武士団対しながわシティバスケットボールクラブの対戦は、「令和6年能登半島地震復興支援金沢武士団チャリティーマッチ」と銘打たれて国立代々木競技場第二体育館で開催された。GAME1はハーフタイム前にしながわの伊藤良太がブザービーターとなるハーフコート・ショットを成功させて会場を沸かせ、オーバータイムの末にアウェイ側のしながわが86-76で勝利。翌日、金沢が外国籍登録の3人全員欠場という厳しい状況で臨んだGAME2は、序盤から品川のペースとなり最終的にもしながわが99-64と点差をつけて連勝した。


両日ともB1からB3までの様々なクラブのユニフォームやグッズを身につけて声援を贈る大勢のファンが集まり、バスケットボールの聖地を盛り上げたチャリティーマッチ。そのGAME1終了後、金沢のキャプテンを務める金久保翔(かなくぼ かける)に話を聞いた。今シーズン開幕から約1ヵ月が過ぎた昨年115日に、コーチ陣不在というチーム状況とプレーヤーたちが置かれた難しい立場についての思いを自身のNoteで発信していたプレーヤーだ。金久保が置かれた状況は、その時点でもプロフェッショナル・アスリートとしては非常に厳しいものだったが、現在は今年の元日に発生した令和6年能登半島地震の影響によるさらなる苦難に直面し、それを乗り越えようと懸命にチームを支えている。

この2日間、個人としてはGAME1が3得点に3リバウンド、GAME2が8得点に8リバウンド。インタビューさせてもらったGAME1終了時点では、敗戦にも自身のオフェンスに関して「ネガティブな感覚は一切ないです」とリーダーらしく前を向く言葉を聞かせてくれていた。GAME2の8得点は今シーズン3番目に高い数値であり、8リバウンドはシーズンハイであると同時にチームハイ。連敗という結果は不本意だったに違いないが、広範なバスケットボール関係者やファン、スポンサーの努力・協力の中で生み出されたチャリティーマッチGAME2という特別な舞台で、気概を感じさせる数字を残した。

今、金久保はどんな思いで自らを奮い立たせているのだろうか。


©月刊バスケットボール





苦境が負けの原因とは思っていない


——今日の試合を見て、やはり震災の影響やシーズン序盤の金久保選手の発信を思い起こしてしまう瞬間も何度かありました。いろいろ難しいことを経験して、フィジカル、メンタルのコンディショニングが難しいシーズンだと思うのですが、どんな難しさがあるのでしょうか?

チームの皆が個々にどう感じているかはわからないんですけど、僕の中では、シーズン序盤のコーチ陣契約解除や震災のせいで僅差のゲームを落とす結果になっているとは思っていません。起きてしまったことはしょうがないですし、その中でできることもたくさんあります。今日の試合も今までの試合も、自分たちがやるべきことをできていない部分がありました。

僕個人は、ほかのメンバーも前を向いてやるしかないとわかっていると感じています。そもそもバスケットボールをさせてもらえていることに、みんな感謝しています。その分やっぱり、僕たちには何ができるんだろうと考えれば、試合に勝つことに越したことはありませんけれど、頑張っている姿を届けることで被災地の方々が何かしらを感じてくれれば、それだけでもいいのかなと。そういったことも三木HC(昨年12月からチームを率いている三木力雄HC)から常日頃話してもらっています。今日も本当に勝ちたかったなというのが正直な気持ちです。


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——シーズン序盤の発信には大きな価値があったと思います。その後どういうインパクトがあったと感じていますか?

少しチームには迷惑をかけてしまったとも、僕の中で配慮が足りなかった部分もあったなとも思っているんですけど、僕が伝えたかったのはコーチがいなくなったとしても今はみんな前を向いて頑張っているということでした。あの発信で状況を知ってくれた方も多かったと思います。僕にいただいた反響は「そういう状況で困っている選手がいるなら応援したい」という内容が大半でした。

——ほかのチームのブースターたちの中にも、「金沢武士団のグッズを買ってみようかな」と応援に乗り出した人がたくさんいたようですしね。

そうですね。そういった反応が多かったと感じています。あの発信が良かったのか悪かったのか、見方はいろいろでしょうけれど、僕のNoteをきっかけに金沢武士団を知ってくれた方も多かったので、その面では発信してよかったと思います。でももう少しチームに配慮できたらもっと良かったと反省もしているんですよね。





取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 金沢武士団 B3リーグ

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