月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2024.03.31

絶対エース渡辺聖が36得点!横浜BC U15が琉球U15に大逆転で「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP」初優勝!

エースが4Qだけで3P6本の大爆発

「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2024」の大会最終日、決勝は横浜ビー・コルセアーズU15と琉球ゴールデンキングスU15のマッチアップとなった。両チームともに過去に同大会優勝の経験はなく、どちらが勝っても初優勝という状況だった。


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試合は序盤から重い展開で進んでいく。両チームともに優れたスラッシャーとフィジカルの強いビッグマンがおり、特にペイントエリアではフィニッシュの部分で相手のプレッシャーを受けてシュートがリングに弾かれる。

思うようにペイントに侵入できないことで、両チームとも3Pシュートもなかなかリズムがつかめず、1Qは7-9と琉球U15が僅か2点のリード。2Qも開始から4分近く経ってもそのスコアは20点にすら届かず、ようやく点が動き始めたのは琉球U15がリズムをつかみかけた3Qに入ってからだった。


両チーム、リバウンドやルーズボールなどの球際への執念は見事だった

「正直、心が折れそうになる時間帯はたくさんあったのですが、何よりも選手が強い気持ちを持って試合をしてくれたかなと思います」

横浜BC U15・京希健コーチが振り返るように、後半は琉球U15が#13 ブレイク ジェレマイア、#56 友寄快星、#88 奥間翔らの力強いリバウンドから、#29 宮里俊佑や#54 越圭司らが走り、3Q残り1分24秒には越のドライブで琉球U15が2桁のリードを取った(31-41)。さらに、4Qには琉球U15の宮里が3Pを決めてリードをこの試合最大の12点に拡大。京コーチが言う「心が折れそうになる時間帯」の一つはここだった。

だが、ここから横浜BC U15のエース#32 渡辺聖が信じられないパフォーマンスを見せる。

まず、宮里に3Pを決められた直後にお返しとばかりにこの試合2本目の3Pをヒット。この1本でタッチをつかむと、次のポゼッションではディフェンスをフェイクで跳ばせ、ステップバックスリーを沈める。これで6点差。琉球U15が後半最初のタイムアウトを取る。だが、勢い付いた横浜BC U15は止まらず、渡辺がタイムアウト明けに2本の3Pを決めて一気に同点に追い付くと、残り4分3秒にはアイソレーションから再び渡辺が3Pをヒット。

これで逆転(53-50)再び琉球U15がタイムアウトで流れを断ち切ろうとするが、渡辺は止まらず、タイムアウト明けにこのクォーター6本目の3Pを決め、そのリードを6点に広げてみせたのだ。しかも、そのほとん度がラインから1〜2m後ろの位置からのディープスリーだった。


4Qで大爆発し、逆転劇の立て役者となった渡辺

渡辺はその時間帯をこう振り返る。

「前半は本当にシュートタッチが悪かったのですが、外したことは本当に気にしていなくて、いつもどおりもらったら打つようにしていました。自分は3Pが入る選手だと思い続けて、落ちても『今日はそういう日だ』と割り切ってやっていました。決まったときも特に気にせず、打つタイミングだったから打っただけ。それが結果的に入って、そこから流れが来ました」

前日の準決勝では3P0/9、そして決勝でも前半はなかなかタッチが戻らなかった。だが、外れても打ち続けるシューターのメンタリティが、最後の最後で大爆発する結果につながった。

前述したとおり、4Qは相手エース宮里が先に3Pを決め、その直後に渡辺が3Pを決め返すという展開から、この3Pシューは幕を開けた。だが、そこでもやり返すという意識はあえて持たなかった。「前半はそういう雑念がほんのちょっとあって、多分入らなかったと思うんです。だから無心になろうと。個人で戦っているのではなく、チームで戦っているわけなので、そこは割り切って特に意識してはいなかったです」


何本外れても打ち続けた

あの時間帯の渡辺は、まさに“ゾーン”に入っていた。普段はチームとしてボールをシェアするが、「ここは俺にやらせてくれと。本当はボールを回してシュートを打つというのが後半のプランだったのですが、『いや、ここはやらせてくれ』とアイコンタクトで味方に伝えました」という渡辺に、チームメイトもコーチ陣も全てを託した。そんなエースの活躍を原動力とした横浜BC U15は、以降一度も再逆転を許さず。最終スコア58-55で歓喜の瞬間を迎えたのだった。

京コーチは渡辺について「下のカテゴリーからずっとウチにいて、ウチのユースを体現してくれているというか、下の学年の頃からずっとリーダーシップを持っていて、(U15に)飛び級で入るぐらい持っているものというか、ウチで培ったものがあると思うので、こういう形で結果が出て良かったです」と笑みを見せた。

渡辺は小学1年生の頃から横浜BC U15のユースに所属し、今年が在籍9年目。文字どおり最後の舞台で爆発し、チームに初優勝をもたらした活躍は、横浜BCのユース全体にとっても大きな財産となったはず。この試合のスタッツは36得点、3Pシュート7/17(41.2%)という堂々たるもので、文句なしの大会MVP選出だった。


抜群のスピードとテクニックで琉球を引っ張った越

一方、敗れた琉球U15にとっても3Qまではゲームプランどおりの展開。Jr.ウインターカップを終えた今年1月から、それまでアシスタントコーチを務めていた末広朋也コーチがヘッドコーチとなり、大きな成長を見せた。末広コーチは「本当にナイスゲームで、横浜さんの良さを消しながら、相手のエースの渡辺くんがここらがどんな引き出しを見せてくるのかを見ながらの戦いでした。一時10点差くらい付いたのですが、後半に彼の強気な気持ちと僕たちのディフェンスの…悪くない及第点のディフェンスはしていたのですが、もう少し駆け引きできたかなというのが正直ありました。ここを一歩いけていたら、また面白いゲームになったのかなと。そこが勝負の鍵だったのかなと思います」と振り返る。

最後は横浜BC U15に軍配が上がったが、宮里と越のダブルエースをはじめ、スターターの5人中4人が2年生という布陣で優勝まであと一歩と迫った。彼らの戦いもまた、見事であった。昨年まで名古屋ダイヤモンドドルフィンズU15を同大会3連覇に導いてきた末広コーチにとってもこの大会はチャレンジであり、「新しいチームに行っても本当に良いチームが作れるのか、というのが本当のコーチの力だと思っているので、それを自分自身に課しながらやっています」と試行錯誤の日々。末広コーチは就任当初、「3年後に決勝に来られたら」と考えていたそうだが、選手たちの努力が末広コーチの指導にマッチした結果、想定以上の結果を出すことができた。


宮里はチームハイの23得点を挙げた

宮里は決勝の戦いについて「前半に相手の難しいダブルチームに自分の逃げの姿勢が出てしまって、そこから相手に『このダブルチームはいけるぞ』という気持ちを与えてしまいました。自分の逃げの姿勢が目立ってしまい、チームを勝利に導けなかったのかなと思います」と肩を落とした。だが、同時に敵エースの渡辺から得たものも大きかった。「今回優勝できなかった分、来年は絶対に優勝するんだという目標もありますし、もっと成長しないといけないです。横浜の渡辺さんは本当に責任感が強かったなと感じているので、来年はより責任感というところを突き詰めて、日々成長できたらなと思います」

初優勝に沸いた横浜BC U15と、涙に暮れた琉球U15。その姿は対照的ではあったが、それぞれに異なる収穫があり、それは今後につながる大きな糧となる。今年の決勝戦は両者のハイレベルな攻防の中に、今後の伸びしろを感じるすばらしい一戦だった。



なお、3位決定戦はサンロッカーズ渋谷U15がベルテックス静岡U15を、5位決定戦はライジングゼファーフクオカU15が名古屋ダイヤモンドドルフィンズU15をそれぞれ下している。

最終結果と個人賞は以下のとおり。

◆チーム表彰
【優勝】横浜ビー・コルセアーズU15
【準優勝】琉球ゴールデンキングスU15
【3位】サンロッカーズ渋谷U15
【4位】ベルテックス静岡U15

◆個人表彰
【MVP】
横浜BC U15 #32渡辺聖(180cm/PG・SG/中3)

【BEST5】
横浜BC U15 #32渡辺聖(180cm/PG・SG/中3)
琉球U15 #29宮里俊佑(181cm/PG/中2)
琉球U15 #54越圭司(165cm/PG/中2)
SR渋谷U15 #21岸歩武(172cm/PG/中2)
静岡U15 #10太田一平(190cm/SF/中3)

【MIP】
横浜BC U15 #62小椎尾賢太(185cm/PF・C/中3)

写真/©B.LEAGUE、取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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