不振にあえぐ新潟アルビレックスBB、ケイシー・オーウェンズHCの思い
11月21日のバンビシャス奈良戦にオーバータイムの末敗れた後、ブースターに感謝を伝えるケイシー・オーウェンズHCと田中成也(写真/©B.LEAGUE)
今シーズン、B1からB2に降格してきた新潟アルビレックスBBが、11月25日・26日に行われた第9節のアルティーリ千葉戦を終えて1勝16敗(勝率.059)という非常に厳しい戦況に置かれている。この2試合は土曜日の初戦が52-81、日曜日が54-78のスコアで、今シーズン開幕から2番目と3番目に少ない得点に抑えられ連敗を喫した。GAME2を終えた後、今シーズンからチームを率いているケイシー・オーウェンズHCの心境を聞いた。何とかして厳しい状況を打開しようとしている新任指揮官は、思いのたけを語ってくれている。
ぜひとも引き出したい外国籍プレーヤーの奮起
——まずは総評をお願いします。
今週末の評価としては、ディフェンスは悪くありませんでした。A千葉の力強いオフェンスを両日とも平均得点以下にとどめましたから。しかし昨日と同じように、あのようなチームに対してターンオーバーをこれほど犯しては勝てません(新潟は2試合で38ターンオーバー)。特に相手のホームコートですからね。
アルティーリ千葉戦GAME2でチームに指示を出すオーウェンズHC(写真/©B.LEAGUE)
——ターンオーバーのお話がありましたが、今コーチとしてそれを防ぐために一番欲しいもの、必要なものは何ですか?
我々はプレッシャーを受けている状態で誰が最もうまくボールを扱ってくれるか、誰がボールを保持しているときによい判断をできるかを見極めなければいけません。さらに、今日は相手のプレッシャーにうまく対処できた場面でオープンショットのチャンスが相当な回数ありましたが、生かせないまま終わりました。フィールドゴール成功率が32%。やっぱり確率を上げていかないと勝てませんし、リバウンドも頑張らないといけません。そして何よりボールをしっかり自分のものにしておかないと。
今は非常に厳しい状態です。苦戦していますが、ボックススコアを見ると失点は第1Qから19、第2Qが15、第4Qが13と抑えているんですよ。でも第3Qにプレスをかけられたところで次々とレイアップを許してしまい、こちらは得点ができませんでした。あの第3Qがすべてを台無しにしてしまったと思います。
——新潟はB2で唯一、日本人プレーヤーの高橋克実選手がチームのトップスコアラーですね。ほかのプレーヤーからのスコアリング・パンチという観点ではどんな思いを持っていますか?
カツミは間違いなく相手のスカウティングレポートの中で注目されています。その中で外国籍プレーヤーの活躍が不足している…。これは真実です。ジョシュ・ニューカークが6ターンオーバー。彼を獲得したのはこのためではありません。ティノ(マーティンス・イバーヌ)が11得点でカイル・ハントが10得点。彼らは本来得点源となるべくして獲得したプレーヤーたちです。もっと働いてもらえるようにしなければ…。
高橋克実は第9節を終えても平均13.6得点で新潟のリーディングスコアラー。個別のパフォーマンスとしては高く評価されるべき数字だが、チームとしての勢いを生み出すには確かに外国籍プレーヤーの得点力が伴う必要がある(写真/©B.LEAGUE)
もちろんプレッシャーを受けながらのことで、簡単ではありません。でも、日本人プレーヤーだけに頼る状態ではだめです。外国籍プレーヤーはボールをバスケットにねじ込むために獲得しているんですから。
相手の外国籍プレーヤー3人のフィールドゴール成功率を見るとアレックス・デイビスが62%、ブランドン・アシュリーが63%、デレク・パードンが54%です。こちらはニューカークが24%、イバーヌが41%で、効率よく決めてくれているのは50%のカイルだけ。ここは私の責任ですね。彼らにもっと働いてもらえるように考えたいと思います。
——まだシーズンは25%程度しか終わっていませんから、巻き返しが可能だと思います。ここまでの流れには様々な不運もつきまとっていると思いますが、今日の試合でもファンの熱意を感じるし、前節ホームで戦ったバンビシャス奈良戦を見ても、皆さんが全力で頑張っていることが伝わってきました。
ブースターの皆さんからとてもありがたい応援を受けていると感じますし、組織としても誇りをもって戦っています。
確かに故障者が出たり、アウェイの試合が多かったり、リーグの中でも上位チームとの対戦が多かったり。それはそうかもしれません。でもそうした言い訳はしたくありません。チームには、「だからといって我々を憐れんでくれる相手はいないよ」とずっと話しています。相手には関係ないことですからね。
それでも我々にはまだまだ多くの試合が残されています。その中で、たとえなかなか得点できなかったり勝てなかったりしても、メディアや新潟のファンが「このチームはしっかりハードワークし続けているな」と感じてくれるようなプレーをしようと伝えています。「新潟は諦めていない。しっかり頑張っているぞ」と思ってもらえるように頑張っていきます。今は本当に苦しくて、思うように得点できずにいます。ここは私の仕事。何とかして状況を打開できるように頑張ります。
ぜひとも欲しい外国籍プレーヤーからのスコアリング・パンチを引き出したいとオーウェンズHCは自らに言い聞かせるように語っていた(写真/©B.LEAGUE)
今は気持ちが裏目に出てしまっている?
ちなみにA千葉相手のGAME1では、ティップオフから8-2と好スタートを切っている。また、同じGAME1でA千葉が身長226cmの新加入センター、リュウ・チュアンシンをデビューさせた第4Qでは、ハイピックでそのリュウをアウトサイドに引っ張り出して(あるいはアウトサイドに出てこないリュウのポジションを見て)、うまく相手ディフェンスを攻略する場面が度々あり、3Pショットも10本中5本成功と高確率で決めていた。実際にこうしたオフェンスの流れが良い時間帯も作れているが、40分間続かない。
新潟はA千葉との対戦を前に平均得点が68.3で、フィールドゴール成功率がB2で唯一40%を切る39.7%だった。オフェンス面での大苦戦は明らかだが、逆にこの週末を前に平均得点が88.8でリーグ1位だったA千葉に対し失点を2試合平均で79.5にとどめた点は、オーウェンズHCも触れている通り大いに評価できるだろう。
第9節までの16試合を終えてもホームでの1勝のみで、現在は連敗が8まで伸びている。その間11月17日にはリーグから、2022年度決算の会計処理における不備が指摘され債務超過状態が明らかになり、交付されていたB1ライセンスの取り消し(B2ライセンスへの変更)が発表されるなど、士気をくじかれるような出来事も報じられた。
前週の奈良戦GAME2をオーバータイムの末77-82で落とした後、コート上で悔し涙をこらえながらホームのブースターに対する感謝と今後の意気込みを語った田中成也の姿が、クラブの現状を物語っている。何とかして勝ちたい。頑張っているし、ここからも頑張り続けていく。もしかしたら、そんな思いが強いからこそ、気負いがターンオーバーの形で表れてしまっているのかもしれない。彼らの奮起が良い形で実ることを願うばかりだ。
取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)
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