月刊バスケットボール6月号

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2023.10.12

EASL開幕戦勝利の千葉ジェッツ、金近 蓮らが躍動――次は超アウェイで勝てるか?

EASL開幕戦で18得点を挙げた金近 蓮

1011日に船橋アリーナで開催された千葉ジェッツ対TNTトロパンギガ(フィリピン)の一戦をもって、東アジアスーパーリーグ(EASL)の2023-24シーズンが開幕。千葉Jはこの一戦に93-75のスコアで幸先よく勝利を収めた。


注目の万能シューター金近 蓮が3Pショットを10本中6本決めて18得点、アイラ・ブラウンが19得点にゲームハイとなる12リバウンドのダブルダブル、ディー・ジェイ・ステフェンズが19得点に9リバウンドなど新戦力が躍動し、大倉颯太も12得点と4人が2桁得点。ガード陣では、エースの富樫勇樹こそフリースローのみの2得点に4アシストと数字的にはおとなしかったものの、小川麻斗が6得点にゲームハイの6アシスト、西村文男も3Pショットを3本中2本沈めての6得点など、全般的に秀逸なプレーメイクの連発でホームのファンを喜ばせた。

試合の流れとしては、前半は競った展開でTNTトロパンギガが先行した時間も長かったが、第3Q開始直後に千葉J10-2のランで一気に突き放し、以降主導権を渡さなかった。Bリーグ開幕節で連敗スタートの千葉J2023-24シーズンの公式戦初勝利。試合後のインタビューでジョン・パトリックHCは「EASLで千葉ジェッツとして戦えることを誇りに思います。ファンの後押しで初勝利を手にすることができました」と話して笑顔を見せた。


試合後、コート上でのインタビューに応じるジョン・パトリックHC

TNTトロパンギガ側では、元NBAの二人の外国籍プレーヤーがインパクトのあるプレーぶりを披露した。その一人はかつてデンバー・ナゲッツなどでプレーした経歴を持つ身長208㎝のビッグマン、クインシー・ミラーだ。ミラーはゲームハイの22得点に6リバウンド。もう一人、かつてブルックリン・ネッツなどで活躍した198㎝のフォワード、ロンデイ・ホリス=ジェファーソンも15得点、9リバウンド、5アシストを記録した。

ホリス・ジェファーソンはヨルダン代表としてワールドカップでも活躍していた。大会期間中にコービー・ブライアント張りのオフェンスで注目を浴び、「左利きのコービー」とさえ呼ばれていたプレーヤーだ。先の第19回アジア競技大会でヨルダンを銀メダルに導いたばかりであり、今回はそのまま中国から合流し、練習もほとんどできていない状況だったという。

それを含めて、TNTトロパンギガはチームとしての仕上がりがまだまだといったところ。試合後の会見でジョージョー・ラスティモサHCは、「スタミナが持つか非常に心配だったが、後半それが出てしまった」と悔しそうに話していた。


ロンデイ・ホリス=ジェファーソンはヨルダン代表としてアジア競技大会でプレーした直後、中国から直接チームに合流したとのことだ

タフな日程での海外遠征――新たな挑戦をもたらすEASL

さて、開幕節から4日間で3試合をこなした千葉ジェッツは、1014日(土)・15日(日)に船橋アリーナで信州ブレイブウォリアーズとのホーム連戦を戦い、18日(水)にチャイニーズ・タイペイ入りしての台北富邦ブレーブス戦、さらに帰国後の21日(土)・22日(日)が仙台89ERSとのホーム連戦(船橋アリーナ開催)というスケジュールだ。週末の連戦と平日の国際遠征が続く日程を乗り切っていくのは簡単ではなく、パトリックHCは「8日間で5試合は自分にとっても新しい」とチームのコンディショニングを注視している様子だった。

遠征に関しては異文化で戦うことも「大切な経験」と語る。「日本だとホームファンはマナーがとてもいいし、両チームを応援してくれます。結局自チームに勝ってほしいとしても、こんなにいいマナーの国はありません」

逆にTNTトロパンギガのラスティモサHCは、ホームに千葉Jを迎える11月1日の再戦(会場未発表)に関して、「マニラで戦えば、PBAの代表としてチームのファンだけでなく人々の応援を受けられます。これは非常に大きな力ですよ」と話し、自国のファンの応援にも期待を寄せていた。

フィリピンは、先に触れたアジア競技大会で、61年ぶりの金メダル獲得に成功している。準決勝では開催国で優勝候補と目された中国代表を相手に、一時20点差のリードを奪われながら77-76で勝利。決勝では、グループラウンドで62-87と突き放されて敗れた相手だったヨルダンを70-60で撃破した。このドラマティックな快進撃で、国を挙げてのバスケットボール熱が高まっていることは想像に難くない。EASLでの応援も強烈に盛り上がりそうだ。

プレーヤーとしてコートに立つ西村は、「若い頃に代表で海外遠征に連れて行ってもらって、良くない環境での試合をこなしてはいるので」とベテランらしく自信を見せた。ただ、「僕は飛行機とご飯でいつも苦労するので、そこにだけすごく気をつけていきたいなと思っています」とも話していた。確かに、国際的な遠征にはそんなリスクもある。何しろマニラと千葉は3,000kmを超える距離を隔てており、フライトは4時間越え。1時間だが時差もあり、国内遠征とは感覚が異なるに違いない。



マニラであれ台北であれ、海外の街に乗り込んで戦うことは簡単ではないだろう。かつ、TNTトロパンギガは11月に入れば今よりもずっと完成度を高めている。果たしてそこで勝てるだろうか。EASLは、日本のバスケットボール界が、タフネスやプロフェッショナリズムを世界レベルで持てているかどうかを問われる舞台もなりそうだ。

EASL公式ウェブサイト

取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: EASL 東アジアスーパーリーグ

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