月刊バスケットボール5月号

【記者の目】12/29ウインターカップ2016~So Close, So Far(男子決勝は福岡第一が東山を制す)~

大会最終日。 男子の3位決定戦と決勝が行われた東京体育館には、 北陸学院と帝京長岡による3位決定戦のティップオフを待たずして、 3階席も含めてほとんどが観客で埋めつくされた。   その3位決定戦は、序盤に帝京長岡の⑭タヒロウがインサイドで シュートにリバウンドに奮闘し、北陸学院に対してリードを奪う。   対する北陸学院は、得点源の⑫大倉が前半で3ファウルに見舞われ、 出場時間を制限される中、点差を離されまいとチーム一丸になって応戦。 前半は26-21と帝京長岡が5点のリードで終了する。   後半に入り、大倉が最初に放った3Pシュートを成功させて小さく ガッツポーズをすると、ジャンパー、フローター、アリウープと 多彩な方法で得点を重ね、流れは徐々に北陸学院へ。 3Qを22-11と得点で相手を上回った北陸学院は、 3Q途中に逆転し、43-37と、前半終了時とはうって変わって 5点リードで最終Qを迎えた。   4Q、タヒロウを中心に点差を詰めようとする帝京長岡だが、 北陸学院は④小室がこのQだけで2本の3Pシュートを決めるなど なかなか点差が縮まらず、最後は北陸学院が59-49で帝京長岡に勝利。 今大会を3位で終えた。       そして迎えた男子決勝。 大会最終日のフィナーレとなる試合が始まった。     ディフェンスは共にマンツーマンでスタートし、 最初の得点を東山は⑨パトリック、福岡第一が⑫蔡という、 両チームのセンターが挙げた。 その後、パトリックを中心としたオフェンスで東山が主導権を握り、 1Qを20-14と福岡第一から6点のリードを奪う。     2Qに入ると、福岡第一が着実に点差を詰めていく。 蔡が柔らかいシュートタッチでジャンパーを決め、リング下でも高確率で加点。 両チームとも、チャンスがあればすかさず速い展開で得点を狙う。 福岡第一の④重冨(周)と⑤重冨(友)のロングレンジシュートも決まり出し、 残り4分21秒で重冨ツインズが自慢のファストブレイクを レイアップで締めくくると、27:28の1点差に。 その後⑮松崎の得点で福岡第一が逆転に成功すると、会場内は大歓声に包まれた。

    流れをどうにかして引き戻したい東山だったが、直後のポゼッションで ④岡田がパスミス。後味の悪いターンオーバーを記録してしまう。 さらに途中出場の⑪吉田が2連続でターンオーバーを犯し、 追加点のチャンスを失ってしまう。 相手のミスから得たチャンスを着実に得点へとつなげた福岡第一は、 前半を39-32とし、東山に対して7点リードを奪う。     10分間のハーフタイムを挟んで迎えた3Q。 前半わずか3得点に終わった岡田が、後半早々にリング下で3ポイントプレイを成功。 東山は本来の形である岡田とパトリックのホットラインが中心となり、 得点を積み重ねて残り7分18秒には43-45と2点差に迫る。   しかし、同点に追いつくチャンスだったオフェンスで、 岡田が自らの足にボールを当てて福岡第一ボールへ。 流れを引き戻す時間帯にまたもターンオーバーを喫してしまう。 一方の福岡第一は、準決勝でファウルトラブルに陥り不発に終わった⑫蔡が ジャンパーやリング下から得点すると、重冨ツインズもロングレンジからの ショットを成功させて主導権を譲らず。 終了間際、重冨(周)の3Pシュートがブザービーターで決まり、 67-57の10点差で最終Qへ。     4Q,何としてでも夏のリベンジを果たしたい東山は、 岡田がスムーズな身のこなしからダブルクラッチを決めるなど着実に加点。 残り約3分で試合は77-70と7点差に。

  だが、福岡第一は焦ることなく試合を進めていく。 重冨(周)が時間を有効に使い、嫌らしいまでのドライブ、 さらにファストブレイクでレイアップを決める。 その間に岡田がリングへと攻め込むものの、 チームメイトが彼のパスに反応しきれずにまたもターンオーバー。 この試合、岡田が後半に爆発し、4Qには8連続得点するなど驚異の スコアリングマシンとなって福岡第一へ立ち向かったものの、 最後は81-78の3点差で福岡第一が勝利し、11年ぶり2度目の優勝を飾った。   優勝した福岡第一は重冨(周)がチームトップの23得点、4アシスト、3スティール。 蔡が21得点、重冨(友)が12得点と続いた。   一方の東山は、パトリックがゲームハイの32得点、22リバウンド、2ブロック、 岡田が後半だけで挙げた23得点を含む26得点、6アシスト、3スティール、 山内が10得点を記録。     試合終了後、井手口孝コーチは「この1年間、とにかく手を抜かず、質の良い練習を して頑張ってきました。それが最後の最後までしっかり出せました。 選手たちを褒めてあげたいと思います」と穏やかな口調でコメント。   準決勝までの試合を通して、ロングレンジシュートがあまり決まっていなかった 重冨兄弟だったが、肝心の決勝で当たりを見せた。 特に④周希は3本放った3Pシュートをすべて成功。   「準決勝までは入りませんでしたが、(決勝で決まったのは)思いきって やった結果だと思います」と重冨(周)が振り返っていた。     はたして、両チームの勝敗を分けたのは、3Pシュート成功率の差だったのか? 確かに、福岡第一の42.9%(14投中6本成功)に対して、 東山は15.4%(13投中2本成功)と大きな差があった。 これも試合を分けた要因の1つと言えるだろう。     しかしもう1つ、スタッツ上で大きな差があったように思える。 それはターンオーバーだ。 福岡第一の18回に対して東山は22回と、回数自体はさほど変わらない。 しかし、東山が犯したターンオーバーは、 同点または逆転が懸かった場面で頻繁に見られた。 その反面、福岡第一は相手が犯したターンオーバーから着実に得点を奪い、 流れを渡さなかった。     試合にはさまざまな人間模様が見てとれるのだが、 相手のターンオーバーからのオフェンスが、 試合の明暗を分けたように思える。     So Close, Yet So Far(近いようで遠い)   東山は福岡第一に対して序盤にリードし、途中逆転を許すも後半に何度も追い上げた。 しかし、最後まで逆転することはできなかった。 そこには“近いようで遠い”何かが存在したのだろう。       7日間の激闘が行われたウインターカップは、今日で幕を下ろした。 男子はインターハイに続いて福岡第一が優勝し、 女子はインターハイ、国体に続き桜花学園が制して3冠を達成した。 優勝した両チームに敬意を表したい。     そして、途中で敗れてしまったとはいえ、東京体育館に集った98チーム、 早朝から会場へ向かい、声を振り絞って自チームを鼓舞し続けた応援団や、 選手のケアに尽力したチーム関係者たち、そして大会を運営した方々、 朝早くから冷たい風が吹く中、外で待ち続けて、会場を埋め尽くした 大多数のバスケットボールファンに対して、取材する者として深く感謝したい。     最後に、すでに年末の時期へと突入しているが、 Bリーグの15節が今日から31日(土)まであり、 1月2日からは日本一を決めるオールジャパンも始まる。 ウインターカップの興奮が収まらない方は、 ぜひとも会場へ足を運んでいただき、 バスケットボール観戦を楽しんでほしい。       感動大賞、募集中!   【感動大賞】 http://www.basketball-zine.com/wintercup2016#question-link   (月刊バスケットボール編集部)  

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